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ホイールナットの締め付けトルクを守らないと危険?!トルク管理の基本を解説

最終更新日 2024年4月22日

「タイヤ交換時はとりあえずナットを強く締めれば大丈夫?」
「工具があれば自分でも簡単にホイール交換できる?」

タイヤ交換時のホイールナットの締め付けトルク管理は、走行するうえで必要な作業です。

ホイールナットが規定トルクで締まっていない場合、部品の破損や車体のブレにつながり、最悪の場合脱輪して大きな事故を招くからです。

本記事では、ホイールナットの締め付けトルクの基本から、正しく締める方法まで、7つのステップにわけてわかりやすく解説します。

ホイールナットの締め付けトルクとは?

ホイールナットの締め付けトルクとは?

ホイールナットの締め付けトルクとは、ハブボルトにナットを締めるときに指定された締め付ける強さを指します。

車の走行性能や安全性を守るためには、ホイールナットを規定トルクで締めることが大切です。

一般的に、普通自動車と軽自動車の規定トルクは以下の通りです。

普通自動車 軽自動車
約100〜120N・m 約80~100N・m

ただし、車種やホイールによって規定トルクが異なります。
安全に走行するために、ホイールナットを締めるときは、規定トルクを必ず確認しましょう。

タイヤ交換で知っておきたい3つの用語

タイヤ交換で知っておきたい3つの用語"

ホイールナットの締め方を説明する前に、タイヤ交換で知っておきたい3つの用語について解説します。

・ホイール
・ホイールナット
・ボルト

タイヤ交換時やトルク管理時に出てくる用語なので、覚えておくことをおすすめします。

ホイール

ホイール

ホイールとは、タイヤに装着する車輪状の部分です。ホイールの役割は、タイヤに歯車軸の回転を伝えたり、エンジンの動力を伝えて走行性能を高めたりと、安全に走るためには欠かせない部品です。

タイヤとホイールを一緒に考える方も少なくありませんが、タイヤは「黒いゴム」の部分で、ホイールは「金属」の部分とそれぞれ役割が異なります。

ホイールのサイズや種類、素材が異なるため、自分の好みに合ったホイールに交換することが可能です。

ホイールナット

ホイールナット

ホイールナットは、車体側のハブボルトに取り付けるときに使用するネジの一種です。車種やホイールによって形状や種類が異なるため、多くのホイールナットが存在します。

たとえば、代表的なホイールナットは下記の3種類です。

テーパー座(60度) 一番汎用性が高い
平面座 トヨタ(レクサス)車のほとんどの純正アルミホイールに使用
球面座 ホンダ車のほとんどの純正アルミホイールに使用

このように、ホイールナットによって形状や種類が異なるため、気になるホイールナットがある場合は、あなたの車に合うナットか必ず確認しましょう。

ホイールナットの形状や種類については、【ホイールナットの形状・種類・サイズ全てまるわかり!気を付けたい注意点】の記事も参考にしてみてください。

ボルト

ボルト

ボルトとは、車両や機械のホイールを固定するために使用されるネジの一種で、ハブボルトともいわれます。

車体を支える強い強度と耐久性を持ち、安全性や性能に大きな役割を与える重要な部品です。車種やタイヤの種類によってボルトの本数は異なり、一般的には4〜6本のボルトでホイールを支えています。

ボルトは、ホイールナットのオーバートルクや、ホイール着脱時のメンテナンス不足により折れる可能性があるため、ホイール着脱時は必ずメンテナンスしましょう。

規定トルクを守らないと危険な理由

規定トルクを守らないと危険な理由

ホイールナットは、メーカーに指定されたトルクで、ボルトに締め付けます。安全に走行するためにも、ナットを締めるときは規定トルクを必ず守りましょう。

締め付けトルクが強すぎても弱すぎてもナットは緩んでしまい、パーツの破損やタイヤの脱輪にもつながる可能性があるからです。

本章では、ナットを強く締めすぎた場合(オーバートルク)と、弱く締めた場合の危険性について解説します。

強いトルクで締めた場合(オーバートルク)

ナットを強いトルクで締めたことをオーバートルクといいます。「緩むのが心配だから、念のため強く締めれば大丈夫」と思って締めてきた方は注意が必要です。

ナットを強く締めすぎてオーバートルクになると、ホイールナット以外に多くの費用の発生が考えられます。

たとえば、以下のような部品が破損したことによる費用です。

・ホイールのテーパー部
・ホイールナット
・ねじ山のつぶれ
・ボルト部分が伸びちぎれる

最悪の場合、走行中にボルトが折れて大きな事故につながれば、車体以外にも多くの用がかかってしまいます。

力ずくでトルクをかけることはせずに、規定トルクを目視で確認できる工具の使用をおすすめします。

規定トルクを守り、未然にリスクを減らしましょう。

弱いトルクで締めた場合

ナットを弱いトルクで締めた場合、ホイールナットやハブボルトが緩んでしまいます。
ナットが緩んだ状態で走行すれば、タイヤのブレや車体のガタつき等、運転に支障がでるため非常に危険です。ネジの緩みに気付かずそのまま走行すれば、ナットが外れたり最悪タイヤが脱輪したりと、大きな事故につながりかねません。

また国土交通省の発表では、脱輪における2つの発生要因のうちひとつにタイヤ交換時の作業不備があげられています。

ナットを締める力は、弱すぎても大きな事故の原因につながる可能性があります。
安心して走行するためにも、規定トルクは必ず守りましょう。
国土交通省:【点検整備不十分・整備作業ミスに起因する事故】

ホイールナット締め付けトルクの確認方法

ホイールナット締め付けトルクの確認方法

ホイールナットの締め付けトルクは、以下の方法で確認できます。

・説明書を確認する
・メーカーやディーラーに確認する

車の説明書を確認する

一般的にホイールナットの締め付けトルクは、購入した車の説明書に記載されています。
たとえば、アクア(トヨタ)のホイールナットの締め付けトルクは103N・m(1050kgf・cm)です。
説明書には以下のように記載してあります。

アクアのホイールナットの締め付けトルク例

ただし、説明書に規定トルクの記載がない場合は、販売店やホイールメーカーに、直接問い合わせをして確認しましょう。

メーカーやディーラーに確認する

車を購入したメーカーやディーラーに直接問い合わせれば、簡単に規定トルクを確認できます。
説明書で調べることも可能ですが、本当に規定トルクが合っているか不安な方は、直接問い合わせをして確認することをおすすめします。

社外ホイールの締め付けトルクを確認する

社外ホイールの締め付けトルクは、販売店またはホイールメーカーに確認しましょう。
中古で車を購入した際に、前オーナーが純正以外の好きな社外ホイールを使用している可能性や、説明書に記載していない可能性もあるからです。
安全な走行をするために、社外ホイールの締め付けトルクは販売店やホイールメーカーに確認しましょう。

ホイールナットの正しい締め方

ホイールナットの正しい締め方

ホイールナットを締める順番は以下の通りです。

  1. トルクレンチを準備する
  2. 車体を持ち上げる
  3. ホイールをハブボルトに通す
  4. ホイールナットを手締めする
  5. 順番通りにホイールナットを締める
  6. 最後の確認

ぜひ参考にしてみてください。

1.トルクレンチを準備する

トルクレンチを準備する

ホイールナットを締めるときは、トルクレンチを使用しましょう。

トルクレンチを使用すれば、ハブボルトやナット、ホイールなど、車体や部品の損傷を未然に防げるからです。締め付けトルクは、強すぎても弱すぎても部品の損傷やナットが緩むことにつながります。

トルクレンチがない場合でもクロスレンチ(十字レンチ)でトルクをかけることは可能です。ただし、感覚で締めると規定トルクをかけるのは難しいため、おすすめの方法ではありません。

トルクレンチを使用すれば、簡単に規定トルクをかけることが可能です。
ホイールナットを締めるときは、トルクレンチを準備しておきましょう!

2.車体を持ち上げる

車体を持ち上げる

ジャッキを使用して、車体を持ち上げます。
ジャッキは車体裏にジャッキ受けがあるので引っ掛けて車体を持ち上げてください。
地面から約3cm以上上がれば準備完了です。

3.ホイールをハブボルトに通す

ホイールをハブボルトに通す

次に、ホイールを車体側のハブボルトに差し込みます。

注意点は、ホイールを斜めの状態でボルトに通すとボルトに接触して傷つく可能性があるため、なるべくハブボルトに対して水平にして取り付けます。

4.ホイールナットを手締めする

ホイールナットを手締めする

水平にホイールを取り付けたら、次はナットを手締めします。

一番先に、タイヤ下部のナットを手締めすれば、タイヤの傾きが抑えられるだけでなく、脱輪の予防にもなるため下から手締めしましょう。

しっかり車体側にホイールを付けた状態で、ぐらつきがなくなるまで手締めします。
※車体が浮いている状態でトルクレンチを使用しても、ホイールと一緒に回転してしまうため、ここではトルクレンチを使用しません。

5.順番通りにホイールナットを締める

車体を地面に下ろしてから、トルクレンチでホイールナットを本締めします。
「カチッ」と音がするまで締めれば、規定トルクになっている証拠です。
規定トルクからさらに締めるとオーバートルクになるので、注意しながら締めましょう。
なお、車種によってハブボルトの本数やナットの締める順番が異なるので、それぞれ解説します。

・ボルトが4本の場合
・ボルトが5本の場合
・ボルトが6本の場合

ボルトが4本の場合

4穴ホイールの場合のナットを締める順番

装着ホイール:マルカユーロスピードV25

4穴ホイールの場合のナットを締める順番は「4」の数字を、一筆書きするイメージで締めていきます。
ナットを、対角線上に順番通り締めることで、ガタつきなく締められます。

ボルトが5本の場合

5穴ホイールの場合のナットを締める順番

装着ホイール:ウェッズレオニスSK

5穴ホイールの場合のナットを締める順番は、「星」の形を一筆書きするイメージで締めていきます。

ボルトが6本の場合

6穴ホイールの場合のナットを締める順番

装着ホイール:マルカナイトロパワージャベリン

6穴ホイールの場合のナットを締める際には、ジグザグ線を書くように、締めていけば迷うことなく締められます。

6.最後の確認

ホイール交換後にしばらく走行したあと、ホイールナットが緩んでいないか確認してください。

ナットに緩みがある場合は、締める作業を再度行いましょう。

何度やっても走行中にガタつきやタイヤのブレを感じる場合は、運転はせずに最寄りの専門店に相談しましょう。

トルクレンチのチェック頻度

トルクレンチのチェック頻度

一般的には、10km走行したらトルクレンチをチェックします。

トルク管理をすることで、タイヤやホイールの負担軽減、車体からホイールが取れる事故を未然に防げるからです。ナットを規定トルクで締めたあとも、定期的なトルクレンチチェックを怠ってはいけません。

また、ナットを増し締めしたあとも、2〜3ヶ月か500kmで増し締め点検をすれば、より安全に走行できるため、定期的に点検するのがおすすめです。
トルクレンチチェックについては、【定期的なトルクレンチチェック!その頻度はどのくらい??】の記事も参考にしてみてください。

ホイール締め付けトルク一覧表【車種別】

ホイール締め付けトルクは車種によって異なります。
本章では、人気のある車種を、普通自動車と軽自動車ごとに一覧表にしました。
ぜひ、参考にしてみてください。

普通自動車

車種 締め付けトルク
ヤリス(トヨタ) 103N・m(1050kgf・cm)
カローラ(トヨタ) 103N・m(1050kgf・cm)
シエンタ(トヨタ) 103N・m(1050kgf・cm)
ノート(日産) 108N・m(1100kgf・m)
ルーミー(トヨタ) 103N・m(1050kgf・cm)
ヴォクシー(トヨタ) 103N・m(1050kgf・cm)
ノア(トヨタ) 103N・m(1050kgf・cm)
アクア(トヨタ) 103N・m(1050kgf・cm)
ハイエース(トヨタ) 100N・m(1020kgf・cm)
フィット(ホンダ) 108N・m(1100kgf・m)

軽自動車

車種 締め付けトルク
N-BOX(ホンダ) 108N・m(1100kgf・m)
タント(ダイハツ) 103N・m(1050kgf・cm)
ムーヴ(ダイハツ) 103N・m(1050kgf・cm)
スペーシア(スズキ) 85N・m(870kgf・cm)
ルークス(日産) 98N・m(1000kgf・cm)
ワゴンR(スズキ) 85N・m(870kgf・cm)
アルト(スズキ) 85N・m(870kgf・cm)
タフト(ダイハツ) 103N・m(1050kgf・cm)
ハスラー(スズキ) 85N・m(870kgf・cm)
ミラ(ダイハツ) 103N・m(1050kgf・cm)

足回りの安全点検はタイヤワールド館ベストにおまかせ

あらためて、本記事では以下の7つを解説しました。

・ホイールナットの締め付けトルクとは?
・タイヤ交換で知っておきたい3つの用語
・規定トルクを守らないと危険な理由
・ホイールナット締め付けトルクの確認方法
・ホイールナットの正しい締め方
・トルクレンチのチェック頻度
・ホイール締め付けトルク一覧表【車種別】

その中でも、重要なポイントは以下の3つです。

・規定トルクは必ず守る
・トルクレンチのチェックは定期的に行う
・心配ならプロに任せる

ナットを規定トルクで締めるだけで、未然にリスクを減らせます。
また、定期的にトルクレンチチェックをすることで、より安全に走行することが可能です。
タイヤワールド館ベストでは、お客様に安心してカーライフが送れるようにお客様の目の前でトルクレンチチェックを行います。
また、全店増し締めと空気圧チェックを無料で行っておりますので、お気軽にお立ち寄りください!

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作成者: ベストライターチーム

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