最終更新日 2024年10月28日
タイヤ交換が面倒で、スタッドレスタイヤの履きつぶしをしていませんか。
「冬用として使えなくなったスタッドレスは夏用として使ってもいい」といった情報もありますが、安全性を考慮するのであれば、履きつぶしはNGと考えるべきです。
今回は、なぜスタッドレスタイヤの履きつぶしがダメなのか、具体的な理由と共に分かりやすく解説していきます。
間違った知識で車に乗ってしまうと大きな事故につながる可能性もありますので、ぜひチェックしてみてください。
- スタッドレスタイヤの履きつぶしとは
- ┗なぜスタッドレスタイヤの履きつぶしをしてしまうのか
- ┗スタッドレスタイヤの履きつぶしは法律違反?車検は?
- スタッドレスタイヤの履きつぶしが危険な4つの理由
- スタッドレスタイヤの寿命を見極めるポイント
- ┗プラットホームの露出(残り溝50%未満)
- ┗スリップサインの露出(残り溝1.6mm未満)
- ┗ひび割れ(硬化度合い)
- ┗製造年数
- スタッドレスタイヤの履きつぶしが起こした事故事例
- ┗事例
- ┗危険性が証明されるデータもJRFが立証済み
- スタッドレスタイヤの交換が面倒ならオールシーズンタイヤもおすすめ
- 寿命がきたら専門店で交換!タイヤならタイヤワールド館ベストへおまかせ
スタッドレスタイヤの履きつぶしとは
スタッドレスタイヤの履きつぶしとは、冬用として使えなくなったスタッドレスタイヤを、そのまま夏用タイヤとして履き続ける行為です。
実は、「冬用」として使えなくなっただけのスタッドレスタイヤは、夏用として使うこと自体は違反になりません。
なかなか詳しく知らない方も多いと思いますので、まずは基本的なことについて解説していきます。
なぜスタッドレスタイヤの履きつぶしをしてしまうのか
そもそも、なぜ履きつぶしをしてしまうのでしょうか。
多くの場合、下記を理由にしているケースがほとんどです。
● 夏用タイヤが寿命で車検が取れないため、そのまま履いている
● タイヤ交換が面倒、交換工賃がもったいない
特に、夏用タイヤが寿命を迎えていることで、履きつぶしを行うケースが多いといえます。
たしかに最近はタイヤの価格も上がっているため、気持ちは分からなくはないのですが、危険度が増加することを考えれば避けるべきです。
スタッドレスタイヤの履きつぶしは法律違反?車検は?
スタッドレスタイヤの履きつぶしは、現状、道路交通法に定めがなく、法律違反にはなりません。
したがって車検においても、履きつぶしをしているスタッドレスタイヤのままでも問題にはなりません。(残り溝(スリップサイン)が車検基準値以上は大前提になります。)
タイヤの危険性を考えれば履きつぶしは避けるべきですが、法律的にはOKとなっているため、どうしても一定数の人が履きつぶしをしている状況です。
スタッドレスタイヤの履きつぶしが危険な4つの理由
では、具体的に履きつぶしが危険とされる理由はなんでしょうか。
主に4つの危険があるとされています。
- ドライ・ウェット路面における制動力が下がる
- 安定性・操作性の低下
- 劣化・摩耗の進行スピードが早い
- 燃費性能の悪化
1. ドライ・ウェット路面における制動力が下がる
スタッドレスは氷上・雪上で最大限の効果を高めるために、地面に密着しやすい柔らかいゴムが使用されています。
通常、ゴムは気温が低下すると硬くなってしまう性質があります。
ドライ・ウェット路面では、タイヤにある程度の硬さがなければグリップ力が発揮できないので、制動力が下がる形です。
制動力が下がれば、自動車がブレーキを踏んでから止まるまでの距離は伸びてしまうので、危険が増してしまいます。
また、スタッドレスは細かい溝が無数に入っていることで、雪や氷とタイヤの間に発生する水分を排出する構造です。
この構造は冬道では良い効果を生み出すものの、雨水量が多い時期など多量の水を排出するには不向きな構造で、むしろ水分を溜め込む可能性があります。
いわゆるハイドロプレーニング現象(タイヤと路面の間に水膜が発生し、ハンドル操作が効かなくなる現象)を起こす要因になるため、スタッドレスの履きつぶしは避けるべきです。
私も過去、梅雨時期にスタッドレス走行した経験はありますが、夏タイヤと同じ感覚で運転すると「止まるまでの距離が遅い」「雨でハンドルが横に取られる」等を経験しております。
2. 安定性・操作性の低下
スタッドレスは剛性が低く、路面に密着しやすい特性があることで、夏タイヤよりも安定性に欠ける傾向があります。
合わせて、柔らかいゴムで設計されていることもあり、走行している時にタイヤがたわみやすく、安定性や操作性が夏用タイヤよりも劣るのがデメリットです。
柔らかい分、硬い夏タイヤよりも凹凸などの衝撃を吸収しやすいというメリットもありますが、安定性や操作性が低いと事故につながる可能性は高くなるので、スタッドレスの履きつぶしは避けるべきでしょう。
感覚的には、走行時に夏タイヤよりも「車体がぐらつく」「ハンドル操作をしてから車の動作まで若干のラグがある」といった現象を感じることになります。
3. 劣化・摩耗の進行スピードが早い
スタッドレスは、冬の気温が低い時期を想定して作られています。したがって、気温が高い時期・路面の温度が高い状況で使用すると、タイヤの摩耗・劣化スピードが非常に早く進みます。
もし、冬のシーズンを終えた時点で劣化が進んでいるタイヤをそのまま使用していると、気づかない内に使用限度を超えていたという事態にもなりかねません。
特に近年は、異常に暑い日が続く傾向もあり、タイヤに大きなダメージを与え、バースト(破裂)につながるケースも多発していますので注意が必要です。
「昔はスタッドレスを一年中使っていても大丈夫だった」と考える方もいますが、気候がここ数年で大きく変わっていますので、その点も忘れないようにしてください。
4. 燃費性能の悪化
スタッドレスは柔軟性があるので、その分夏タイヤよりも転がり抵抗が多いとされています。
したがって燃料の消費は多く、夏タイヤ装着時よりも燃費性能は悪化する形です。
安全面に直結するわけではありませんが、これだけガソリンが高くなりつつある状況を考えれば無視できない問題だと思います。
スタッドレスタイヤの寿命を見極めるポイント
スタッドレスの履きつぶしをしないためにも、寿命を見極める明確なポイントをここで理解しておきましょう。
車に詳しくない方であれば、よく分からない領域だと思いますので、プロがしっかりと解説させていただきます。
- プラットホームの露出(残り溝50%未満)
- スリップサインの露出(残り溝1.6mm未満)
- ひび割れ(硬化度合い)
- 製造年数
1. プラットホームの露出(残り溝50%未満)
プラットホームとは、スタッドレスだけに記されている目印で、残り溝が50%未満になった時点で露出するように作られています。
これは、スタッドレスが冬用タイヤとして性能を発揮できる限界を超えたサインになるため、プラットホームが露出した時点で、氷上や雪上では使用できない形です。
一見、溝が残っているように見えるので、「まだまだ使える」と考える方もいますが、溝が50%未満で冬道の走行することは、夏用タイヤで走っているのと変わらないことになります。
非常に危険ですので、寿命と捉えて必ず買い替えをしてください。
2. スリップサインの露出(残り溝1.6mm未満)
スリップサインとは、残り溝が1.6mmになった時点で露出する目印になります。
これはタイヤとしての寿命を超えているサインで、即交換が必須の状態です。
タイヤとして使える状態ではないため、危険性は最高レベルになっていると考えてください。
道路交通法でも、「残り溝1.6mm未満は使用禁止」と定められていますので、スリップサインが露出しているタイヤを使用すれば、法律違反になります。
スリップサインは、先ほど解説したプラットホームよりも奥に設置された目印なので、プラットホームが露出した時点で交換したユーザーであれば、さほど気にする必要はないでしょう。
もし、あまり気にせずタイヤを使用している方であれば、すぐにチェックして、自分のタイヤがどの状態にあるのかチェックしてください。
3. ひび割れ(硬化度合い)
ひび割れは、スタッドレス・夏タイヤどちらにも関係するチェックポイントで、目視で分かるようなヒビ割れが入っていれば、危険性を考慮して交換が必要です。
ヒビ割れは誰でも簡単に確認できる部分になるので、必ずチェックしておきましょう。
少量のヒビ割れだけであればまだ焦る必要はありませんが、全体に無数のヒビ割れ、長い線のヒビ割れなどは寿命と考えてください。
ヒビ割れが起きる要因としては、タイヤのゴムは劣化が進むと硬化していく特徴があり、硬化が進んでいるとタイヤにヒビが入っていきます。
つまり、「劣化したタイヤ」という証明でもあるので、使用は中止すべきです。
ヒビが入っていると、走行時にバースト(破裂)が起きる可能性が高いといえます。
4. 製造年数
タイヤの製造年数は、スタッドレスの場合「3年〜4年」を目安に交換していくのがベストです。
ほとんどのメーカーは、3年〜4年、長くても5年で交換するのを推奨していますので、溝の残り具合は関係なく、年数で寿命を見極めるのが安心でしょう。
製造年数の調べ方は、タイヤのサイドウォール(側面)をチェックします。
メーカーによって若干表記は異なるものの、大抵「4桁の数字」が記載されていますので、そちらを見れば見分けが可能です。
数字の見方としては、「0120」とあった場合、最初の2桁「01」が製造週、後の2桁「20」が製造年となります。
つまり、「01=1週目」「20=2020年」であり、2020年の1週目に製造されたと判断できる形です。
尚、数字は表側に書いてあることが多いものの、たまに裏側のみに表記されているケースもあり、その場合は車体からタイヤ+ホイールを取り外す必要があるでしょう。
スタッドレスタイヤの履きつぶしが起こした事故事例
スタッドレスタイヤの履きつぶしがいかに危険か分かるように、事故事例や実験データについても目を通しておきましょう。
事例
2023年に北海道広尾郡大樹町で軽乗用車と乗用車が衝突し、7人死傷、内4人が亡くなった悲惨な事故がありました。
こちらは夏時期だったにも関わらず、軽自動車側がスタッドレスを装着していたことがわかっており、履きつぶしによる影響が運転に影響していた可能性が指摘されています。
軽自動車はセンターラインを飛び越え、反対車線に飛び出してたことで事故になっており、かなりのスピードで走行した結果、操作性や安定性を失ってしまっていたようです。
スピードの出しすぎはもちろんのこと、スタッドレスの履きつぶしによる危険も問題視された事故でした。
危険性が証明されるデータもJRFが立証済み
2015年にJRFが、「タイヤの種類や状態、路面状況で制動距離がどのように変化するのか」といった危険性を検証するテストを実施しています。
テスト内容としては、夏タイヤ・スタッドレスの両方で異なる路面状況を走行し、ブレーキ操作を行った後の制動距離をテストした形です。
テスト結果は以下の内容になりました。
直線ブレーキテスト(ドライ)
タイヤの溝 | 時速60km(m) | 時速100km(m) |
---|---|---|
タイヤの溝 | 平均 | 平均 |
夏用タイヤ(10分山) | 17.0 | 47.5 |
夏用タイヤ(5分山) | 16.3 | 44.1 |
夏用タイヤ(2分山) | 15.8 | 42.6 |
スタッドレスタイヤ(プラットホーム出現) | 18.8 | 51.1 |
直線ブレーキテスト(ウェット)
タイヤの溝 | 時速60km(m) | 時速100km(m) |
---|---|---|
タイヤの溝 | 平均 | 平均 |
夏用タイヤ(10分山) | 16.7 | 47.6 |
夏用タイヤ(5分山) | 16.7 | 50.8 |
夏用タイヤ(2分山) | 18.0 | 70.5 |
スタッドレスタイヤ(プラットホーム出現) | 20.3 | 72.2 |
旋回ブレーキテスト(ドライ)
タイヤの溝 | 時速60km(m) | ||
---|---|---|---|
制動距離(m) | 円中心からの距離 | ||
平均 | 平均(前輪) | 平均(後輪) | |
夏用タイヤ(10分山) | 19.2 | 1.4 | 1.2 |
夏用タイヤ(5分山) | 18.4 | 2.0 | 1.6 |
夏用タイヤ(2分山) | 18.6 | 2.2 | 1.9 |
スタッドレスタイヤ(プラットホーム出現) | 20.8 | 2.5 | 2.0 |
旋回ブレーキテスト(ウェット)
タイヤの溝 | 時速60km(m) | ||
---|---|---|---|
制動距離(m) | 円中心からの距離 | ||
平均 | 平均(前輪) | 平均(後輪) | |
夏用タイヤ(10分山) | 19.4 | 1.3 | 1.1 |
夏用タイヤ(5分山) | 19.5 | 2.2 | 1.9 |
夏用タイヤ(2分山) | 20.6 | 2.6 | 2.2 |
スタッドレスタイヤ(プラットホーム出現) | 26.7 | 4.8 | 4.1 |
テスト結果を見ても分かる通り、スタッドレスタイヤでドライ・ウェット路面を走行した時の制動距離は明らかに伸びているのが分かると思います。
テストで使用しているスタッドレスタイヤは、プラットホームが出現している(冬用タイヤとして使えない)ものになるため、履きつぶしの危険性が十分に分かる結果といえます。
スタッドレスタイヤの交換が面倒ならオールシーズンタイヤもおすすめ
スタッドレスタイヤの履きつぶしをしてしまう方の中には、「毎シーズンにスタッドレスタイヤに交換するのが面倒」と感じているケースも多いと思います。
そんな方にはおすすめなのが、各メーカーからでているオールシーズンタイヤがおすすめです。
通年で履けるタイヤ構造になっており、ドライ・ウェット路面、氷上・雪上などオールラウンドに対応できる性能が搭載されています。
近年はタイヤ性能も格段に進化しており、オールシーズンタイヤの万能性には驚きを隠せません。
「本当に冬道が走行できる?」と疑問の声もありますが、都市部等における積雪量であれば、なんら問題なく、安全走行が可能です。
ただし、積雪量の多い地域やアイスバーン(路面凍結)を走行する環境では、安全面を最大限に確保するためにも、スタッドレスタイヤは必要とお考えください。
おすすめのオールシーズンタイヤも2つ載せておきますので、気になる方はチェックしてください。
● ダンロップ:オールシーズンマックス AS1
● トーヨータイヤ:セルシアス
ダンロップ:シンクロウェザー
メーカー | ダンロップ |
---|---|
商品名 | シンクロウェザー |
サイズ | 15〜19インチ |
価格 | ¥21,450円〜 |
特徴 |
・路面状況に合わせてタイヤ自身が最適な性能に変化す画期的なオールシーズンタイヤ ・「水スイッチ」水に触れるとゴムが柔らかくなり、ウェット路面でのグリップ力が向上 ・「温度スイッチ」低温下ではゴムが硬くなりすぎず、雪上や氷上でもグリップ力を維持 |
購入ページ | 詳しくはこちら |
ダンロップ:オールシーズンマックス AS1
メーカー | ダンロップ |
---|---|
商品名 | ALL SEASON MAXX AS1 |
サイズ | 13〜20インチ |
価格 | ¥9,500円〜 |
特徴 |
・雪上ブレーキ性能、静粛性能、ウェット性能、ロングライフ性能の4つを高次元で実現している ・排水性が高い構造で、スタッドレスが苦手とするウェット路面にも強い |
購入ページ | 詳しくはこちら |
トーヨータイヤ:セルシアス
メーカー | トーヨータイヤ |
---|---|
商品名 | CELSIUS(セルシアス) |
サイズ | 14〜18インチ |
価格 | ¥10,100円〜 |
特徴 | ・スノー性能とドライ・ウェット性能を最大限に発揮する非対称パターンを採用 |
購入ページ | 詳しくはこちら |
寿命がきたら専門店で交換!タイヤならタイヤワールド館ベストへおまかせ
今回は、スタッドレスタイヤの履きつぶしについて解説してきました。
一見、冬用タイヤとして使えなくなったスタッドレスタイヤは、夏用として使えると考えがちですが、ドライ・ウェット路面に必要な性能が備わっていないため、使用するのは止めてください。
東北エリアにお住まいであれば、タイヤワールド館ベストにぜひお越しください。お車に最適なタイヤを予算内で、しっかりとお探しいたします。
タイヤの専門スタッフが常駐しているため、不明点はなんでも相談が可能です。
また、オンラインショップも展開しているため、全国どこからでもタイヤの購入が可能です。
全国の約4,000の店舗と連携しているので、購入だけでなく、自宅近くの整備工場等を予約・取付までネット上で手配できます。
オンラインショップでは、タイヤ購入から取付までにかかる「トータル金額」を確認できますので、非常に分かりやすく比較できるのもポイントです。
スタッドレスタイヤは寿命がきたら、即交換がおすすめです。ぜひ楽しいドライブを楽しんでくださいね。